Archive: Reviews
March 17, 2010
書評:『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』


日本語版編集から:上の写真は、『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』の原書『FAB』のものです。
MIT Center for Bits and Atomsの所長を務める Neil Gershenfeld(ニール・ガーシェンフェルド)が 「How to Make (almost) Anything」("ほぼ" あらゆる物を作る方法)という講義を行ったとき、受講生のあまりの多さに仰天した。とくに驚かされたのは、そのほとんどが理論的研究に関する授業を取っておらず、学歴条件も満たしていなかったにも関わらず、物作りを夢見ていた学生たちであったことだ。学生たちはみな、センターのFab Lab(ファブラボ)で作ろうと、突飛なプロジェクトを持ち込んでいた。ある学生は、止めるためには格闘しなければならない目覚し時計のアイデアを持っていた。別の学生は、オウムがインターネットを閲覧できるようにする方法を探ろうとしていた。また他の学生は、欲求不満の叫びを保存する方法を見つけようとしていた。
世界中に存在することをガーシェンフェルドが知るに至る、人々のこうした物作りへの情熱が、この本の核心だ。人は、自分が必要とするものを自分でデザインして作りたいと考える。しかし、人間が大昔から抱いてきたこの欲求は、職人が手作りするよりも効率的に継続的に作ることができる工場によって、多かれ少なかれ抑圧されてきたのだが、不幸なことに、その効率化された方法では、利用者の個人的な希望や要求をうまく満たすことができない。わずかに形を変えることで、ある程度は我慢させられるだろうと利用者は侮られてきた。そこに、再び自分で作りたいという欲求が甦り、物作りを望んでいた人々に、それまで工場だけが可能だった物作りの機会を、パーソナルな製造マシンが与えることになった。
簡単だが重要な歴史を振り返ったあと、ガーシェンフェルドは本の核心に入る。変化に富む数々のプロジェクトを通して、個人や組織がパーソナル製造マシンを使って周囲の世界に与える影響力を紹介する。
ガーシェンフェルドは、Ken Paulの話を紹介している。彼はレゴのマインドストームを使って、USPS(米国郵政公社)の郵便の取り扱い方を向上させる方法の試作品を作った。Mel Kingは、ボストンのスラム街に住む子供たちのためのファブラボを設立した。ガーナのある村の村長、Kyei Amponsahは、貧困に苦しむ村の住民のために、発電用のテスラタービンや冷房用のボルテックスチューブなどの道具をファブラボで作りたいと考えた。こうした人々の話をちりばめ、ウォータージェット、レーザーカッター、CNCルーター、3Dプリンターなどといったパーソナル製造のための技術について紹介している。彼はこれらの技術について "Hello World" の例を使って解説し、これらの装置の長所と限界に光を当てている。
「Fab」は5年前に書かれた本だが、それはCupCake CNC以前、さらにそれ以前に生まれたRepRap前の時期だ。そんなに昔に書かれたこの本の内容は、今の時代に即しているのだろうかという疑問が生じるが、完全に即している。話題は非常に今日的であり、事実、私がこれを書いている今、MakeとWiredの最新号(英語版)には、それぞれの特集記事でこの話題が取り上げられているほどだ。
技術的な側面はそれほど重要ではない。物作りのムーブメントは、技術が主導しているのではなく、社会的な変化がもたらしているからだ。「Fab」ではこれを、解決策は大企業が与えてくれるという私たちの考え方に対する反動であると解説している。この概念は、つねに、いかなる道具にも勝る。
FAB Neil Gershenfeld 著
出版社: Basic Books
ISBN: 0465027458
日本語版編集から:日本語訳は『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』ニール・ガーシェンフェルド著、糸川 洋訳、ソフトバンククリエイティブ 、2006年発行。
- John Baichtal
[原文]
Posted by Tetsuo Kanai |
Mar 17, 2010 03:00 AM
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January 15, 2010
書評:Cory Doctorow著『Makers』


Makerの世界に身を置いている我々は、これから先、私たちがどうなっていくのかを心配しないわけにはいかない。ある時点で、ちょっと前までの数十年間のような世界に戻ってしまうのだろうか。あのころ、クラフトはおばあちゃんがするものであり、物作りは中年の技術指導員のすることであり、DIYらしきものと言えば、ビデオの録画設定を自分ですることだった。物は修理せずに捨てる。お金を借りて粗悪なガラクタを買う。まさに暗黒時代だ。
そんな生活にはもう戻らないと誰もが同意するだろうけど、疑問は残る。今のDIYムーブメントはどこへ向かっていくのだろうか。Cory Doctorowの最新刊『Makers』は、そこに焦点を当てて数十年先の未来を描いた小説だ。話の舞台は、従来の経済が完全に落ち込んだ世界だ。そこで立ち上がるのは、そう、ハードウェアハッカーにDIY愛好家にMakerといった面面だ。
物語は、コダセル社の重役、Landon Kettlewellの記者発表から始まる。コダセルは、コダックとデュラセルを合併させるという、突飛な構想から生まれた会社だ。破綻した2つの企業を合併させることに、いったいどんな意味があるのか。Kettlewellの夢は、DIYプロジェクトに資金とノウハウを提供して利益を得ることに特化したMaker企業を作ることにあった。2人組がガレージで事業を立ち上げるためには、5万ドルあれば足りる。コダセルは、そんな人たちに資金と経営マネージメントを提供するかわりに、収益の一部を徴収する。
当初、Kettlewellの革命(作者はこれを "ニューワーク" と名付けている)は、社員の引き抜き横領など、勢いのある企業には付きものの問題はあったものの、成功が運命づけられているように見えた。そこに、PerryとLesterという2人のスターMakerが登場する。山ほどのアイデアを抱える風変わりな物作りの達人だ。Kettlewellは、技術系ブロガーの Suzanne Churchを説き伏せてフロリダに送り、彼らを取材させた。さらに、彼らのアイデアを金にするためのビジネスマネージャーを送り込んだ。この5人が、この物語の中心人物だ。
ニューワーク革命は、卑劣な投資家や、やたら銃を撃ちたがる警官や、Makerたちの商才の欠如といった大きな問題に直面する。彼らは新製品で賭けに出て、成功と失敗を繰り返すが、そこでドクトロウは、オープンソース技術がビジネスの世界でどんな役割を演じるかを探っている。
私はこの主人公たち、とりわけ、Perry、Lester、Suzanneが好きだ。彼らの言動には同意しかねる部分もあり、あまり好きになれないこともあるが、それが単なるステレオタイプではない奥深い人物像の形成に役立っている。
もちろん、悪役も登場する。善良なハッカーやブロガーを脅かす存在だ。たとえば、執念深いブロガーのFreddy、強引なディズニーの重役たちだ。しかし、もっとも大きな問題の元凶となるのが、ナードたちの内部的な摩擦だ。貪欲な背広組みに煽られてアイデアを金にしようとする一方で、努力に見合った報酬を得つつ自尊心や倫理観や尊厳を守り抜こうともがく。
Makerムーブメントに魔法は残っているのか? 背広組みと共存できるのか? PerryとLesterは、己の精神の堕落と何度も何度も戦うことになる。彼らは金持ちになろうとは思っていない。何かを作っていたいだけだ。その意味で『Makers』は、未来予測小説であると当時に、警鐘でもある。
物作りの未来について、楽しみながら考えてみたい方にお勧め。
『Makers』
Cory Doctorow 著
出版社: Tor Books
ISBN: 978-0765312792
ドクトロウは、自身が推し進めるクリエイティブ・コモンズCommunity Commonsの考え方に従い『Makers』を無料ダウンロードできるようにしています。
- John Baichtal
[原文]
Posted by Tetsuo Kanai |
Jan 15, 2010 03:00 AM
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June 18, 2008
ロウソクの化学

Citizien Scientist最新号には、The Chemical History of a Candle(『ロウソクの化学』マイケル・ファラデー著)のすばらしい書評が掲載されている。Mikeの記事より。
マイケル・ファラデーは、正式な教育をほとんど受けていないにも関わらず、偉大な科学者として歴史に名を残しています。彼はまた、電子工学の父とも呼ばれています。1860年から1861年にかけてのクリスマス休暇の間、ファラデーは英国王立協会において、少年聴講生たちを対象に6回にわたる講演を行っています。本書には、この6回の講演の内容に加えて、白金に関する講演の内容も収録されています。ファラデーは、不幸な境遇を持ち前の判断力と忍耐力で乗り切った、驚くべき人物です。製本所の見習い作業員だったころ、ファラデーはサー・ハンフリー・デイビーの一連の講義に出席し、詳細なノートを取りました。後に彼は、その内容を清書してサー・ハンフリーに贈呈しました。それがきっかけで、サー・ハンフリーはファラデーに仕事を依頼するようになったのです。
マイケル・ファラデーは、私が賞賛するばかりでなく、アマチュア科学者協会のForrest M. Mims IIIは「大変な影響を受けた私のヒーローだ」と評しています。アルバート・アインシュタインは、アイザック・ニュートン、マイケル・ファラデー、ジェームズ・クラーク・マックスウェルの3人が、科学の歴史において最も影響力のある人物だと述べています。この本は、2002年にノーベル化学賞を受賞したジョン・フェン博士から推薦されたものです。博士は、マイケル・ファラデー・ファンクラブの長年の会員でもあります。
- Phillip Torrone
編集から:日本語訳は、プロジェクト杉田玄白で読むことができます(山形浩生訳)。
[原文]
Posted by Tetsuo Kanai |
Jun 18, 2008 12:50 AM
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April 17, 2008
Richard Sennett著『The Craftsman』書評

Core77はRichard Sennettの著書『The Craftsman』のレビュー記事を書いている。
(これは)手と頭、職人気質と啓発の関係を考えるケーススタディーの集合体だ。この中で、ロンドンを本拠地とする著名な社会学者であり、人の経験に強い興味を抱いているSennettは、人間が共通して持っているもっとも基本的にして欠くべからざる能力は、物作りの能力であると主張している。正しく訓練を受ければ、その工程は筋肉の記憶として機能するようになる。手を動かしているうちに、文字通り頭が訓練されるのだ。もしSennettの言うとおりなら、オモチャのデザインや、コーヒーメーカーや携帯電話のプロジェクトのために、ろくろで粘土の壺を作ったり、木にカンナをかけたり、石膏をまぜたりといったことを学べば、その経験によって、デザイナー兼職人、つまりより啓発された人間になれるという。コンピューターの画面から工房の作業台に至るまで、考えて、作って、みんなに見せて、またやり直すという作業によって、私たちはずっと以前から気がついていたことだ。そのために私たちは朝目覚め、そしてそのことを夜に夢見るのである。この夏に読む本のリストに追加しておこっと。
訳者から:わかってることだけど、今の子供たちには実際に手を動かす機会が極端に少ないように思う。こういう本を通して、その大切さが論理的に多くの人に伝わるといいね。
- Becky Stern
[原文]
Posted by Tetsuo Kanai |
Apr 17, 2008 01:00 AM
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January 8, 2008
OLPC vs Kindle

MikeはO'Reilly Radarに、OLPCとAmazonのKindleとの比較記事を書いている。これらはまったく別のデバイスなんだけど、O'ReillyのSafari(月払い制の電子ブックサービス)の担当者であるMikeは、ご想像どおり、どちらも本を読むための道具として見ている。
KindleもOLPCもウェブの閲覧ができるようになっているが、KindleはAmazonのライブラリーを見て購入することを目的に作られたものだ。一方、OLPCにはFirefoxが搭載されていて、まさにウェブ閲覧用に作られている。Kindle は、AmazonのWhispernetを使用する。その内容の豊富さには驚くべきものがある。どうしようもなく遅いというわけでもない。私はKindleでGMailを読み、NBA.comでバスケットボールの試合結果を見てみた。ここでちょっとお金の計算。もし、毎月49ドルほどプロバイダーに払うことを考えれば、Kindleを買ってWhispernetを無料で使っても同じことだ。8カ月使えば、その分のプロバイダー料金と比較してKindleの元が取れる計算になる。私には無理な話だが、たまにしかインターネットを使わないライトユーザーなら可能だろう。望むべくは、Experimentalセクションのブラウザが追々改良されることだ。今でも十分に競争力のあるデバイスだが、ここを改良すればAmazonは最強になれる。私はKindleの読みやすさを気に入っている。本体脇に親指を置くと、とても読みやすくなる。私はこの操作にすっかり慣れてしまった。私はソニーの電子ブックリーダーも持っているが、残念ながら、Kindleの直感的な使いやすさと読みやすさには、とうていかなわない。- OLPC and the Kindle(英語)-[via] Link
- Phillip Torrone
訳者から:日本ではどーも電子ブックってのが、コンピューターのソフトウェアに近い存在でやたら値段が高かったりする。どーゆーわけだろうね。
[原文]
Posted by Tetsuo Kanai |
Jan 8, 2008 01:03 AM
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